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翌日以降フーゴは、ウルタニア城内の自室に、半ば軟禁に近い形で閉じ込められることとなった。ドアの向こうには、フーゴを監視するための兵が常駐している。
重臣たちとの会議以来、彼はウルタニアの主としての身分も自由もすべて奪われていた。今の彼にできることは、ただ眼下の街を眺めて時をやり過ごすことだけだった。
フーゴは、街の様子を案じていた。
現在も体面上はウルタニアの支配者であるフーゴの下には、何の情報も入ってこなかった。しかし、それでも騒がしい城下の様子からは、今もゲネポスの群れがこの街に迫っているということが感じられた。
フーゴに代わってウルタニアを指揮しているモゼスがどのように動いているのかは、分からなかった。
ただ、彼が王国を贔屓していることだけは明らかだった。フーゴや他の者が思ったように、共和国側の色合いが強いナスティ公を頼るような真似はしないだろう。
フーゴの心配は、もしかしたらこの街が真っ向からゲネポスの群れと戦うことになるかもしれない、ということだった。
「ガレオス」や「リオレイア」などといった、この地域にごく少数生息する飛龍種と比べると、ゲネポスは小さく、力も弱いため、そこまで凶悪な存在ではない。しかし、それでもウルタニアの凡庸な軍隊とたった2人の地元ハンターにとっては、十分に手強い相手だった。
この街や市民が、無事に済むとは思えない。
フーゴは可能ならばナスティに急使を出して救援を請い、住民をヒルコン川対岸のナスティ側に逃がすべきだと感じていた。数十隻の大型ガレー船を持つという噂のナスティ公であれば、それが出来るはずである。
しかしそこまで考えても、フーゴにはため息をつくことしか出来なかった。今まで持っていた権力は、ほとんど全てモゼスに奪われ、今では彼らに意見することすらできない。
ふと、ドアをノックする音が聞こえた。
「フーゴ。」
その声には聞き覚えがあった。
振り向くと、意志の強さが感じられる赤い眼差しが、真っ直ぐにこちらに向いていた。整えられた銀色の長髪が日の光を浴びて鈍く輝いている。
フーゴは目を見開いた。
「シルヴィア・・・。」
フーゴの驚いた様子を見ると、シルヴィアはさも満足気に笑った。
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