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本格中世風モンスターハンター小説(自称)をメインに、日常生活、趣味などに関するブログ。
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指名手配の女 13
writer:イナ 2011-04-03(Sun) モンスターハンター小説 

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「シルヴィア・・・。・・・どうしてここに来たんだ?」

 フーゴが驚きを隠せないままに尋ねると、シルヴィアは少し照れたように頬を掻いた。
 それは、フーゴが今までに彼女から見たことのない表情だった。これまでの彼女の表情は荒んだもので、その内に常に警戒心が潜んでいることが感じられるものだった。
 しかし、今、目の前に居る彼女の眼差しは、警戒心というよりは幾分かの優しさを湛えたものだった。衣服も改められており、乱れていた銀髪も背中の中ほどの辺りまで真っ直ぐに整えられている。

「もっと南に逃げようと思ってたんだけど、途中でゲネポスが群れてこっちに来てるのを見て、あんたに知らせなきゃと思ってさ。
 ・・・何?」
「・・・あ。ああ、いや、なんでもない。」

 フーゴは、自分でも気づかないうちに、シルヴィアに見とれてしまっていた。
 目を奪われていた、と言ってもよかった。改めてみる彼女は、それほど美しく見えた。もともと端整な顔立ちではあったが、それも汚い身なりのせいでくすんで見えていたのだろう。
 正面から彼女を見ることに、どこか気恥ずかしさを感じて、フーゴは軽く目をそらした。

「しかし、どうやってここに入ってきたんだ?門番も、そこにいる監視の者も、君を通しはしなかっただろう?」
「ああ。フーゴに会わせろって言っても会わせてもらえなかったから、ちょっと寝てもらってるよ。」
「寝てもらってる?」

 フーゴは何のことかと思い、ドアの外を確認した。
 そこには、気絶して横たわる兵の姿があった。

「シルヴィア、君は一体何者なんだ?」

 フーゴは、投げかけるように言った。
 今までに溜まっていた様々な問いの全てを、それに含めたつもりだった。彼女は何者なのか、どうして指名手配を受けているのか、そして、彼女がウルタニアに来てから起こっている、一連の物事の関連は何なのか―― 。
 シルヴィアは顔を背けた。その横顔は、心なしか悲しげに見える。

「あたしは、ギルドナイトだよ。」

 ぽつりと、呟くようにシルヴィアが言った。

「指名手配される前は、ナスティのハンターギルドに居てさ。そこで1~2ヵ月前にギルドから、北の火山での任務を命令されたんだ。
 でも、任務自体はそんなに難しいものじゃなかったからさ、何でギルドナイトの任務になるのか分かんなかったんだけど・・・。」

 シルヴィアの声は徐々に震えを増していき、そこで一度途切れた。そして彼女は、目を閉じてうつむいた。
 少しの間の後、彼女は意を決したようにこちらを見た。

「火山の一番奥に、見たこともない、黒くて大きい飛龍が居てさ。目が合っただけで、怖くて、気が狂いそうになって、あたしは逃げたんだ。
 ・・・あれは、黒龍だと思う。」

 彼女の目は、明らかな潤みを帯びていた。その目や表情、全てを通じて、彼女が体験した苦しみが、フーゴにも伝わってくるようだった。
 開け放たれた窓からは初夏の風が緩く舞い込んできて、彼女の髪をなびかせた。外には相変わらずの青空が広がっている。
 街の喧騒も、不思議と今は聞こえなかった。

「黒龍・・・?」

 フーゴがいぶかしげに尋ねると、シルヴィアは頷いた。

「ギルドはその後すぐに、あたしを殺すための追っ手を差し向けたし、王国からも指名手配された。多分、黒龍を見たあたしの口を封じようとしてるんだと思う。」
「・・・そうか。君がそう言うなら、本当にそうなんだろう。しかし、これは絶対に他言しないほうがいいな。」

 シルヴィアは再び頷いた。

 黒龍が実際にこの世界に存在し、今も火山の奥深くに眠っているなど、にわかには信じられない話だった。しかし、彼女の様子は、それが真実であると十分に感じさせるものだった。
 数百年前に数え切れない程の人々の命を奪ったといわれる飛龍が、今もこの世界に存在すると知れ渡れば、この大陸はパニックに陥るだろう。人々は、黒い災厄の復活に常に怯えながら暮らさなければならないことになる。
 この状況から改めて考えると、数日前にフーゴの下に投げ込まれた密書にも、それらしさが感じられた。シルヴィアには王国から直々の指名手配がかけられている。おそらくこれは、黒龍の存在を知った者――シルヴィアを消そうとする動きに、王国も一枚噛んでいるということだろう。

「しかし、黒龍も一大事だが、まずはゲネポスを何とかしなければいけない。」

 フーゴが冷静で居られたのは、黒龍よりも差し迫った問題が、今もなおウルタニアに近づいているからだった。おそらくゲネポスの群れは、数日のうちにウルタニアに到達するものと思われた。
 フーゴとしては、一刻も早くモゼスに奪われた権力を取り戻したいと考えていた。信用のならないモゼスよりも、自身の手でこの街を守りたいという思いがあったのだ。

「そのことなんだけど、フーゴ。あたしは、ガラじゃないけど、あんたには恩があると思ってる。何かあんたの力になれることはない?」

 シルヴィアは落ち着きを取り戻したようで、真っ直ぐにこちらを見つめていた。


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小説をメインに、色々書いていこうかと思います。基本、自己満足です。ネット上ではあんまり友達居ないんで、気軽に声かけてやってくださいw好きな作家は司馬遼太郎・村上春樹・塩野七生。カオスですねw
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