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群れが見え始めてから城壁に達するまでは、間もなくだった。
一際大きいドスゲネポスに率いられた数匹が篝火の向こうに現れたとき、フーゴはグラニコスから後方に下がるように忠告された。
兵士達はカチャカチャと音を立ててボウガンに弾を込め、城外に標準を合わせている。自分の居場所は無いようだった。
フーゴは1人の兵士を伴い、城壁の階段を早足で降りた。その最後の一段からインドラ通りの石畳に足を降ろしたとき、城壁から無数の破裂音と、それに続いて空気を切り裂く音が聞こえてきた。
戦いが始まったようだった。
東西に篝火が焚かれ、両側の夜空は赤く染まって見えたが、この通りには何の明かりも無い。月明かりのみである。通りの家も、街並みも、輪郭以上にははっきりとしない夜闇に包まれた中、フーゴは城へ向かう足を速めた。
底知れぬ緊張と不安で、胸が押しつぶされそうなほどに締め付けられる。剣術も体術も持たない彼がゲネポスと出会いでもすれば、その先に待つのは死のみだった。
後ろからグラニコスの怒号が聞こえた。彼の指示で兵士達は城壁の守りを放棄し、街中に散らばり始めたようだった。
いよいよ、群れの鳴き声が城壁を越えてきた。
敵の足は、思っていたよりもずっと早かった。彼らが正門と城の中間辺りまで達した時、既に周囲には甲高い鳴き声が溢れていた。
先ほどから不吉な予感を感じ、じっとりとした冷や汗が額や背中に張り付いていた。フーゴがそれを敵の気配だったと気づいたのは、目の前にそれが現れてからだった。
―― キシャァッ!
肉屋の店先から飛び出してきたゲネポスは、すぐにこちらに体を向けて身をかがめた。大きく開いた口の奥を揺らし、威嚇するような声を上げる。
1歩、後ずさったフーゴを庇うようにして、兵士が剣を構えた。フーゴも腰の帯刀に手を伸ばす。
その時、彼のすぐ背後からも、すっかり聞きなれてしまった鳴き声が響いた。フーゴは素早く振り返り、そして目を見開いた。
「なんということだ・・・。」
フーゴは、帯刀の柄に手を載せたまま、自分よりもずっと上にある橙色の眼を見つめた。その眼も、はっきりとこちらを捉えているようだった。
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ひっそりとカウンター置きましたw