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鉱石門の守りは、確かに薄かった。付近の城壁は城壁と言うよりも塀を少し立派にしたようなもので、シルヴィアの背丈よりも少し高い程度のものだ。この程度の高さならば、ゲネポスもすぐに飛び越えてくるだろう。
城壁の上には応戦できるような空間も無いため、すぐに市街戦を行うか、城外で戦うほかに無かった。他の兵士やハンターたちは城壁のすぐ後ろに台を作ってのぼり、まずはそこからボウガンで戦う構えを作っていた。
シルヴィアは、1人、門の外に立っていた。この場所は、5~6人が並んで歩けるほどの道になっている。両側は盛り土してあり、その上は乾燥した草むらとなっていた。
自分がここに立つことで、少しでも多くのゲネポスを引き付けたいと思っていた。
北西に向いた正門と違って南側のこちらからはゲネポスの群れは見えないが、彼らの鳴き声だけは不気味に響き渡っていた。
(・・・ゲネポスぐらい、いくら来たって平気だ。)
シルヴィアは、自身に言い聞かせるように呟いた。
ハンターとしてモンスターを狩ることは久しぶりだ。以前と同じように体が動くかどうか心配だったが、それでもゲネポスの群れ程度に後れを取るつもりは全く無かった。
彼女は背中にかけられたアイアンソードを手に取った。ずっしりと重い鉄の柄からは、ひんやりとした無機質な感触が伝わってくる。
両手に持って構え、その刀身をゆっくりと眺めながら、シルヴィアは苦笑した。刃は輝きを全く発せず灰色にくすみきっており、剣先に近い部分には大きな丸い刃こぼれがあった。目先まで持ってきて水平にしてみると、先端に向かうにつれ刀身が微妙に反れているのが分かる。彼女が駆け出しの頃に使っていた武器も同じアイアンソードだったが、それよりもずっと粗悪なものだ。
もっとも、相手の弱さを考えればこれでも十分な武器ではあった。
そんなことを考えているうちにも、夜空に響き渡る鳴き声は大きさを増していた。
左側に気配を感じ、シルヴィアはアイアンソードを構えなおした。ゲネポスが相手といっても、久々の狩りに心臓は高鳴った。息を整え、気配がした草むらに目を凝らす。
辺りに響いている鳴き声を頭の中から消去し、微風でそよぐ草音に集中した。
刹那の時が流れる。
――― ギャアァッ!
シルヴィアが睨んでいた草陰の向こうから、黄土色の塊がこちらに飛び込んできた。大きな口を開き鋭い牙と爪を月明かりに輝かせたそれは、現れると一瞬で彼女の目の前まで到達していた。
だが、その牙にしろ爪にしろ、彼女に触れることはなかった。
ゲネポスの姿を確認するのと同時にアイアンソードを振り上げた彼女は、その頭部を、恐ろしく的確な斬撃で真っ二つに切り裂いた。剣の切れ味のせいか、首元で刃は止まっている。
シルヴィアは、自分の髪、頬、首、手に生暖かい血が次々に跳ねてくるのを感じた。もっともそれは感じるだけのことであり、特別な感情を呼び起こすようなことは無い。
アイアンソードを振り下ろしきると、その勢いで地面に叩きつけられたゲネポスは、ようやく剣先から解放された。どくどくと流れ出る血が、既に地面に染みを作り始めている。
最初の1匹を始末すると、後続はすぐに現れた。
2、3匹と同時に飛び掛ってくるそれの攻撃をかわしながら急所を狙ってアイアンソードを繰り出しているうちに、シルヴィアはいつの間にか十数匹のゲネポスに囲まれていた。
(・・・ちょっと、マズイかも。)
戦いながら彼女は、徐々に焦りを感じ始めていた。
もう何匹のゲネポスを斬ったか分からない。少しづつ、彼女の動きは鈍ってきていた。武器の悪さに加えて今までの怠惰な生活が、想像以上に彼女の体力を低下させていた。
腰を落として爪を避け、そのままゲネポスの喉元にアイアンソードを突き入れた。減っていく彼女の体力とは対照的に、敵の数は増え続けている。
(まったく、あたしも鈍ったもんだな。)
以前の自分であれば、この程度で疲れを感じるようなことは無かったはずだ。
シルヴィアは、相変わらず絶え間なく突き出される爪と牙を避け続けながら、この場から脱出する方法を考え始めていた。
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ひっそりとカウンター置きましたw