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本格中世風モンスターハンター小説(自称)をメインに、日常生活、趣味などに関するブログ。
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writer:イナ 2017-11-23(Thu)  
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指名手配の女 05
writer:イナ 2011-03-24(Thu) モンスターハンター小説 
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 フーゴは約束を守り、一週間後にまた彼女のもとをたずねた。シルヴィアは、良くも悪くも変わらずに、同じ場所で同じようにしていた。
 そんな彼女を、フーゴは責めるつもりは無かった。
 もとより、彼女とはじっくりと向き合っていく覚悟をしている。

「やあ。約束通り、また来たよ。」

 フーゴは、精一杯の親しみをこめてシルヴィアに話しかけた。
 ウルタニアを取り巻く状況はまだ変わってはいないが、このごろのフーゴは心に落ち着きを取り戻していた。

「・・・。」

 シルヴィアはちらりとこちらを見て、すぐに目をそらした。

「元気にしていたか?何か足りないものがあったら、遠慮せずに言ってくれ。」
「金。酒。」
「分かった、用意しよう。どれくらい必要なんだ?」
「・・・なんなんだよ、あんたは。」

 シルヴィアは深いため息をついた。そして、少し困ったような表情でこちらを見た。

「あたしと一緒にいて、楽しいか?調子が狂うんだよ、あんたといると。もうあたしにかまわないでくれ。」
「しかし、私はこの街の領主だ。君を立ち直らせる義務がある。」
「ああ、そうかよ。あたしは立ち直る気なんかこれっぽっちもないんだ。だから、もうここには来るな。」

 シルヴィアは、静かに、しかし徐々に語気を強めながらそう言った。
 その言葉は、彼女が心の内に秘めている、何かの悲鳴のようなものの漏出のように、フーゴには感じられた。

「・・・シルヴィア。」

 小さく息を吸い込んでゆっくりと口を開き、低く重い声で言った。
 シルヴィアは少しうろたえたようだが、次の瞬間にはまた不機嫌にまゆをひそめていた。
 フーゴは、シルヴィアからぴくりとも視線をずらさなかった。

「何度も言うが、私はここの領主だ。何十万人の人々を守っていかなければいけない。シルヴィア、君一人救い出せないような人間が、彼らの生活を守っていけると思うか。」

 シルヴィアは何か言いたげ口をとがらせたが、気にせずに続けた。

「君に何があったのかは私は知らないが、このまま道端にずっと居られたのでは、私が困る。街の治安のこともあるが、なぜか君を救わねばいけないような気がしてな。気にかかって仕方がない。」

 フーゴはそこまで言ってから少し恥ずかしさを感じ、視線を外して頭をかいた。
 再び彼女に視線を戻すと、シルヴィアは横を向いてうつむいていた。
 いつもの彼女は反抗的で粗暴である。しかし、今のシルヴィアは少し違った雰囲気をまとっているような気がした。
 フーゴは、そうした彼女の時折見せるかげりのある表情も気になった。おそらく、何か大きな事情を抱えてウルタニアにやってきて、ここに座っている間にも様々な葛藤があるのだろう。

「そうだ、君にこれをやろう。」

 フーゴは思い出したようにポケットから指輪を取り出した。

「指輪?」
「ああ。本当は金をやればいいのだろうが、フランツ家は貧乏でね。もらい物の装飾品なら余っているから、君にやろうと思って持ってきた。」
「わりいけど、すぐに売るぜ?」
「もちろん。私もそのつもりで持ってきている。」

 指輪には青いメノウ石がほどこされている。価値としてはそこそこのものだ。市民が見ても珍しいというものではない。それほど、ありふれたものだった。
 確か、ウルタニアのさらに南部の州、サンタニアの南の果ての荒野地帯に発見されたメノウ鉱山の利権を得た大商人が、挨拶代わりに持ってきたものだったと覚えている。
 これほどきれいに発色したメノウも珍しいと、その商人は言っていた。
 宝石のことは良く分からないが、他のメノウと比べてもきれいなことは分かる。
 本当は、もっと高価で美しい宝石をプレゼントしたかった。ブルーサファイアやエメラルドといった他の宝石が澄んで輝いているのに対して、メノウは不透明で、輝きも鈍かった。
 女性へのプレゼントとしては良いものではない。

「きれいかな?メノウにしては良い品らしいが。」

 フーゴは少し不安になって、シルヴィアにたずねた。

「さあな。まぁまぁってとこじゃないの。」
「そうか。」

 すぐに売るつもりなのだろう。シルヴィアは興味無さげにそう言って、無感情に指輪を受け取った。

 もうじき7月である。
 薄暗い路地を抜ければ日差しが強く、じわりと汗がにじんでくるほどの暑さだった。
 昨日まではそうでもなかったが、今日は打って変わって夏日である。おそらく、これから9月まではこういった暑い日が続くことだろう。

 ゆるく暖かい風が、二人の間を吹き抜けていった。
 二人のいる路地裏は住宅が入り組んでいて日陰が多く、すずしかった。

「落ち着くな。ここは。」
「だから居るんだ。」

 フーゴは、塀にのしかかるシルヴィアの横に座った。ひやりとした石畳が気持ちいい。

「・・・なんだよ?」

 何も言わずに隣に座ったフーゴを、シルヴィアが怪訝に見た。
 そして、居づらそうにして腰をずらし、少し距離をとった。

「城にいてもここほど落ち着きはできないだろうな。少し話でもしないか?」
「別に話すことなんてねーよ。」
「じゃあ、聞いてくれていればいい。」
「あんたなぁ・・・。」

 シルヴィアはため息まじりに言った。

「なんだ、だめなのか?」
「だめとは言わないけど」
「じゃあ、いいだろう?聞いてくれ。こういう立場になってしまったからにはしょうがないだろうが、何気ない話を出来るような話し相手が居なくてな。」
「・・・。」

 それからしばらく、フーゴは、思いついたことを思いついたように喋った。
 初めは天気の話だったり市民たちの噂話だったりしたが、段々と愚痴や文句といった感情も混じっていった。
 シルヴィアは、たまにあいづちを入れる程度で、ほとんどの話を聞き流していた。

 思えば、今までこんなに風に俗に会話をしたことは無かった。
 父は厳格な人で、周りの同年代の少年たちと話すのは毒だと言って許さなかった。そのために、幼いころから話し相手は執事くらいで、常に過剰な英才教育の監視下だった。
 支配者になった今では、余計に人の悪口など言えなくなったし、人前で弱音など吐けなかった。
 
 30分ちょっと話すと、やがて話題が尽きた。
 気づけば、自分の立場すら忘れて話に熱中してしまっていた。

「・・・そろそろ城に戻ろう。」

 フーゴは立ち上がった。熱中の余韻がまだ残っている。

「時間があったら、またここに来てもいいかな?」
「・・・勝手にしろよ。」

 ちょっと間が開いてから、シルヴィアがそう言った。
 聞き疲れたのか、否定する気力もないといった感じであった。

「・・・物好き野郎。」

 城に向かって歩き始めたフーゴの背中越しに、シルヴィアがつぶやいたのが聞こえた。

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小説をメインに、色々書いていこうかと思います。基本、自己満足です。ネット上ではあんまり友達居ないんで、気軽に声かけてやってくださいw好きな作家は司馬遼太郎・村上春樹・塩野七生。カオスですねw
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