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本格中世風モンスターハンター小説(自称)をメインに、日常生活、趣味などに関するブログ。
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指名手配の女 終幕
writer:イナ 2011-05-22(Sun) モンスターハンター小説 


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 一滴、また一滴と、水のしたたる音がどこからか聞こえてくる。
 じめりとした空気。暗がりにぼんやりと浮かぶ無機質な鉄格子の向こうには、湿った石壁が見えた。

 アマンダス王国の首都「ペルシャナ」の地下である。百万の臣民が暮らすと言われる華やかな都市の下には、死刑か終身刑を受けたものが投獄される地下牢があった。
 ウルタニアで捕らえられたシルヴィアは、この地下牢の一室に閉じ込められていた。
 朽ちかけた木のベッド、土ぼこりを被ったシーツ、朝晩の黒パンと薄いミルク。ここで彼女に与えられたものは、それだけだった。もっとも、彼女にとっても、死を待つ部屋でそれ以上に必要なものなど無かった。

(終わってみれば呆気ない人生だったな・・・。)

 シルヴィアはベッドに腰掛けて壁を眺めながら、そう自嘲した。
 辺りは不気味なほどに静かである。
 ウルタニアで捕らえられてから、もう数ヶ月かは経っただろうか。自分がこのまま地下牢で朽ち果てるように死んでいくのか、あるいは何らかの方法で死刑に処されるのかは分からない。しかし、この永遠にも思えるほどの長い時間の中で、そのどちらにせよ受け入れる覚悟は出来ていた。

(でも。)

――― もう一度だけでいいから、ウルタニアに行けたら・・・。

 そう思うと、シルヴィアの胸は激しく痛んだ。
 自分が今まで生きてきた道程は、荒涼としたものだった。幼い時から他人の愛情を受け取ることも出来ず、与えることも無いまま、孤独に生き抜いてきた。
 そんな中で、自分を初めて救おうとしてくれた人が彼だった。ごく短い期間ではあったが、彼のために働けた数日は幸せだった。今までの人生の中で、あの辺境の小さな街での日々と、彼と過ごした数日間の日常が、一際強く輝いて思える。

 もう一度、彼に会いたい。声を聞きたい。それだけが彼女の唯一の悔いになっていた。
 結果として、彼は自分の身柄を引き渡しはしたが、それを裏切りだとは思わなかった。ウルタニアを守るためには、自分を犠牲にするほかに無かったのだろう。それを思うと、自分の死も使命であるように思える。

(あいつの・・・。フーゴのために、あたしはここで死ぬんだ。)

 シルヴィアはそう心に念じて、胸の痛みを抑えた。

 その時、廊下から足音が聞こえてきた。晩の食事にしては早いと思い、彼女はいぶかしんだ。ほのかな松明の光もゆっくりとこちらに近づいてくる。
 現れたのは、灰色のゆったりとした服に身を包んだ男だった。目の辺りまで深くフードを被り、顔を確認することは出来ない。
 男は鍵を出して彼女の牢の扉を開け放ち、ためらいも無く中に入ってきた。
 シルヴィアはベッドから立ち上がって身構えた。胸の鼓動が早まる。この男は何者なのか、何をしようとしているのか、見当もつかなかった。

「シルヴィア。」

 その声を聞いて、シルヴィアは呆然とした。
 望んでも、もう二度と聞くことないだろうと諦めていた、その声だった。

「フーゴ・・・。」

 無意識のうちに、溢れるように涙が流れた。
 男はフードを取り払い、彼女のすぐ目の前まで歩いてきた。そして、ゆっくりと腰に両腕を回し、彼女を抱き寄せた。
 シルヴィアは何の抵抗もせずにそれを受け入れた。

 その数ヶ月の後、ヒルン共和国と王国に反旗を翻したナスティ・ウルタニア両公の連合軍と、王国側との
戦争が始まった。”ある龍の力”を巡る二つの陣営によるこの戦いは、後に「力を求める人間の果てしない
欲望と傲慢が生み出した醜い戦い」として語られることとなる。
 ウルタニア公「フーゴ・フランツ」はこの激動の時代の中で、王国との戦争と、復活した”龍”の討伐という二つの戦場を駆け抜けた。その傍らには、彼の片腕として活躍した一人の女性ハンターの姿があったという。

■ 指名手配の女・終

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小説をメインに、色々書いていこうかと思います。基本、自己満足です。ネット上ではあんまり友達居ないんで、気軽に声かけてやってくださいw好きな作家は司馬遼太郎・村上春樹・塩野七生。カオスですねw
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