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本格中世風モンスターハンター小説(自称)をメインに、日常生活、趣味などに関するブログ。
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writer:イナ 2017-11-23(Thu)  
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指名手配の女 16
writer:イナ 2011-04-18(Mon) モンスターハンター小説 

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 その夜、公務室から灯火が消えることは無かった。ぼんやりとした蝋燭明かりの中、フーゴは一人、机に座っていた。
 シルヴィアは城内に与えた部屋で休ませている。彼女自身はこの場にとどまることを希望したが、今後のことを考えてのことだった。
 ゲネポスと一対一程度ならばウルタニアの兵も良く戦えるだろうが、乱戦となっては分が悪いとフーゴは考えていた。さらに強力なドスゲネポスが相手では、大勢でかかりでもしなければ到底敵わないだろう。
 その時、彼女の力が必要なのである。こんなところで彼女を疲れさせたくはなかった。

 ふと、ドアを叩く音が聞こえた。慌てたような叩き方ではなく軽く二度ノックする音だったので、緊急の報告だとは思わなかった。しかし、ドアを開けたその顔を見て、フーゴはさすがにうろたえた。
 ドアの向こうから姿を見せたのは、ニノンだった。

「フーゴ殿、数日ぶりでございます。」

 彼女は飄々とした足取りで、フーゴのすぐ前まで歩を進めた。
 フーゴは動揺を隠すことが出来なかった。心臓の脈動が一気に早まり、声を出そうとしても喉がつかえた。

「シルヴィアがあなたの下におられますね?」

 ニノンは単刀直入にそう切り出した。その言い方からは確信が感じられる。ごまかしは効かないようだった。

「・・・そうだ。」

 それ以上の声を出すことは出来なかった。彼女は別段フーゴを睨みつけていたわけではないが、その全身からは押し込まれるような威圧感を感じた。

「では彼女から黒龍の件についてもお聞きになったと思いますが、残念ながらそれは事実です。しかし王国ではなく、共和国と通じた彼女が、黒龍を復活させようとしているのです。
 どうか、彼女を匿うような真似は止めて、こちらに差し出してください。フーゴ殿は、彼女の言葉に惑わされているのです。」

 ニノンは嘆願の眼差しでこちらを見ていた。心なしか、先程までの彼女が発していた威圧感が緩んでいるように感じる。
 フーゴはシルヴィアを心から信頼していたが、ニノンの言葉に全く動揺しないわけではなかった。彼女から事情を聞くことは出来ていたが、素性まで知っているわけではない。それに、事情にしろ素性にしろ、そんなものは後付けでいくらでも作ることができるのだ。
 しかし、だからといってニノンを信じることも出来なかった。ニノンを怪しい女だとは思ってはいなかったが、何よりもフーゴはシルヴィアを好意的に思っていた。出会った時の彼女の生気を失っていた様子や、事情を打ち明けてくれた苦しげな表情もまだ覚えている。
 それが嘘だとは思えなかった。

「ここに国王からの親書と、ギルド本部からの手紙がございます。身分も何も分からないような女と王国と・・・。どちらを信じればよいのか、聡明なフーゴ様ならお分かりになるだろうと思いますが。」

 フーゴの揺れる心境を見透かすように、ニノンが2枚の手紙を差し出した。1枚は縁取りに青い装飾が入った羊皮紙で、王国の公式文書に使われるものだ。もう1枚はこれもまた羊皮紙だが、比べると簡素なものだった。どちらも大儀な印が押されている。

「これから毎晩、未明の船着場でお待ちしております。彼女を連れてお出でください。黒龍の復活だけは絶対に防がねばなりませんから、そのためにも彼女を捕らえなければならないのです。
 そうしていただければ、ウルタニアは王国と、それから私が命を賭してでもお守りいたしますわ。」

 伝え終わると、ニノンは少し自信を湛えたような微笑を見せてから、深々と礼をして去って行った。

 

 フーゴは2枚の手紙の字面を少し眺めた後、公務室を出た。手紙の内容は読む前から予想はついていたが、シルヴィアが共和国と通じているということと、彼女の演技に騙されずにこちらに引き渡すようにということだった。
 公務室を出て右手の突き当たりにある階段を下りて、1階へと向かう。彼女の部屋は1階にあった。
 フーゴは彼女を信じたいと思っていた。そのためにも彼女と話をして、自身に多少なりとも湧いている疑念を解いておきたかった。
 なにも彼女の素性を問いただそうというのではない。他愛の無い話をして彼女の人間味を感じるだけでも、この疑念は晴れるだろうと思われた。
 彼女の部屋のドアを叩いた。

「シルヴィア、入るぞ。」

 言うとほとんど同時に、フーゴはドアを開けた。すると、一陣の夜風がフーゴの身体をすり抜けていった。幾分かの湿り気を帯びて体にへばりつくような、生暖かい風だった。
 シルヴィアよりも先に目に入ったのは、開け放たれた窓から今にも飛び出そうとする黒服の男だった。男はこちらを見て、驚いたように目を見開いている。

「誰だ!!」

 フーゴが叫ぶと、一瞬の間もなく男の跳躍が見えた。そして、男はすぐに深い闇の中に溶け込んでいった。
 シルヴィアに視線を移すと、彼女もこちらを見ていた。フーゴが与えた白い麻のローブに身を包んだ彼女は、部屋の隅にあるベットに腰掛けていた。表情もいつもと変わった様子は無く、冷静な中にも少々のけだるさのようなものが感じられる。

「共和国のスパイだよ。なんでか、あたしにも接触してくるんだ。」
「それは本当か?」

 おぼろげな明かりの中、彼女の眉が釣りあがるのが見えた。

「疑ってんの?」
「いや・・。」

 フーゴは一応の否定を口にしたが、彼女に対する疑念は晴れるどころかますます濃いものとなったことを感じた。彼女と共和国のスパイとの関係を問いただそうと口を開きかけたその時、騒がしい足音が聞こえてきた。

「ゲネポスの群れが城に迫っております!!」

 息を切らした兵士が、廊下で叫んだ。その声は悲鳴と呼んでも良いようなものだった。

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小説をメインに、色々書いていこうかと思います。基本、自己満足です。ネット上ではあんまり友達居ないんで、気軽に声かけてやってくださいw好きな作家は司馬遼太郎・村上春樹・塩野七生。カオスですねw
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