[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
<<<最初から読む>>>
城に戻ると、すぐにモゼスがフーゴのもとにやってきた。モゼスは王国の首都、ペルシャナで王太子と会見した後、早速その報告にやってきたらしい。
モゼスはぎょろりとフーゴを見た後、軽く一礼してから口を開いた。
「王太子にこの国の立場を説明し、ご理解をいただいて参りました。王太子よりは、鉱物や火薬草といった物資のナスティへの供給を出来る限り停止するように、伝言を承っております。」
「ふむ、そうか。」
王太子イヴァン・アマンダスは、王国内部では唯一、王からの信用を得ている人物であった。とりあえず、王国の側から理解が得られたと言っても良かった。
「しかしフーゴ殿。この私に隠し事をしておりますな?」
そう言って、モゼスは睨みつけるよう眉間にしわを寄せた。
「隠し事だと?」
フーゴは突然のモゼスの問い詰めに驚いた。彼としては隠し事として思い当たる節などまったく無かった。
「シルヴィア、という女をかくまっておられますな?
かの者は反政府運動をして王国の指名手配を受けている者です。王国の内部でもフーゴ殿が指名手配の女をかくまっていると、噂になっておりますぞ。」
「馬鹿な。私はシルヴィアをかくまってなどいない。」
「左様でございますか。しかしその口ぶりは、会ったことはある、といった感じですかな?」
「それは、会ったことならばあるが・・・。」
フーゴは、自分とシルヴィアの接触が既に噂になっていることを意外に思った。
フーゴが彼女と会うときはいつも二人きりであったし、彼女との関係を口外したことは無い。とすれば一体、誰がこの噂を流したというのだろうか。
それだけでなく、彼女がこの街に逃げ込んでいたこと自体、ずっと以前から知られていたということになる。
(こちらの手の内は見透かされているということか。)
フーゴは、王国の情報力の高さに舌を巻く思いだった。シルヴィアのみでなく、ウルタニアの動静までもがつぶさに知られていたように思われた。
「やはりそうでございましたか。そのことで、ウルタニアがどれほどの疑いを受けていたことか・・・。」
モゼスはため息混じりに言った。
おそらくフーゴが、シルヴィアを通じて共和国の側と接触をした、とでも思われていたのだろう。
「本日は、その女を捕らえるために派遣されてきた者を連れてまいりました。ご紹介いたします。」
フーゴが頷いたのを見ると、モゼスは半身を後ろに向けて、入ってよいぞ、と言った。
すぐに女が部屋に入ってきた。
女は白いワイシャツに赤いベストという珍しい格好をしていた。女性らしいややふっくらとした顔つきに、くりっとした目が印象的だった。髪は短めに整えられている。年はおそらく20半ばより前だろう。
「ニノン・ヴィレッテと申します。お目にかかれて光栄です。」
ニノンと名乗った女は、うやうやしく礼をした。
フーゴが彼女を見て頷くと、彼女はやさしい微笑みを返してきた。
ひっそりとカウンター置きましたw