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城に戻ると早速、何人かの補佐役がフーゴのもとにやってきた。彼らは、一様に報告書や認可証などの書類を携えている。
フーゴは十数枚のそれにいちいち目を通し、サインをしてから返してやった。
やるべきことはすべてやってから街に出たつもりだが、少し城を空けただけで、仕事はすぐにたまる。フランツ家を継いで、政治を仕切るようになってから一年が経ったが、未だにこの忙しさには慣れなかった。
最後の書類にサインをして、やっと静かになった公務室で一息ついていると、扉をノックする音が聞こえた。
「入れ。」
「失礼致します。」
そう言って入ってきたのは、フランツ家の執事をつとめている老人だった。
執事は一枚の羊皮紙をフーゴの前に差し出した。
羊皮紙は、王国や王族が公文書を発行をする時に使われるものだ。普通の紙よりもやや赤茶けた色をしているので、すぐに区別することが出来る。
「さきがた、王国より届いたものです。」
「ほう。指名手配か。」
読むと、王国に敵対的な活動家の名前が三名挙げられており、これを捜索して捕らえろということだった。
簡潔な文章の下には、アマンダス王国の8代目王ミハルヒトのサインがある。
おそらく、すべてのランドに同じ文書が渡ったのだろう。広大なアマンダス王国の全土に、このような形で指名手配が告知されることは珍しい。よほど重大な罪を犯しでもしたのだろう。
「しかし、名前だけでは、どうにも捜索しづらいな。女か男かしか分からない。」
「そうでございますな。」
「まぁ、どのみちこんな田舎町には関係ないだろう。保管していくれ。」
軽く目を通しただけで、フーゴはすぐに羊皮紙を執事に返した。
王国政府が追っている重要な人物が、このような僻地の田舎町まで来るはずがない。
そう思い、フーゴは、指名手配された三人の名前を頭の片隅に置くだけにとどめた。
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ひっそりとカウンター置きましたw